環境省が分類する
10の泉質と適応症について

※出典:環境省自然環境局「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」

温泉の中でも、特に治療の目的に供し得る温泉は「療養泉」と呼ばれています。
その定義は温度が25℃以上、または、遊離二酸化炭素や鉄イオン、水素イオン、総硫黄などの物質いずれか一つが一定以上含まれていることです。その成分ごとに10の泉質に分類されています。
10の泉質についての説明を記載しましたが詳しくは、当ホームページに記載された個々の温泉供給元の「温泉分析書」でご確認ください。


単純泉

温泉に溶け込む溶存物質が比較的少なく、無色透明無味無臭で湧出温度が25℃以上の温泉。Phが8.5以上をアルカリ性単純泉といい美肌の湯とも呼ばれています。
低めの温度の湯にゆっくり入浴することで、自律神経不安定症や不眠症などの症状に改善が期待できます。
環境省から通知されている適応症や禁忌症は同じだが入浴時の温泉の肌触りがぬるぬるしているのが特徴的。他の泉質に比べ体への負担が少なく、高齢者や小児などにもおすすです。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○末梢循環障害、○冷え性、○うつ状態、○きりきず、○皮膚乾燥症
□自律神経不安定症、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□耐糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
なし


塩化物泉

溶存物質が1Kg中1g以上で、塩化物イオンを主成分とし海水に似た食塩を含む温泉。
入浴後、水分が蒸発した後に塩分が結晶として肌に付着するため保温効果が高く、古来より「温もりの湯」と称されています。陽イオンの中でナトリウムイオンを多く含むと「ナトリウム-塩化物泉」。カルシウムを多く含むと「カルシウム-塩化物泉」と表示されます。
成分の濃い特に「ナトリウム-塩化物強塩泉」は1Kg中14g以上の塩化ナトリウム(食塩)を含んでいます。塩化物イオンは、主として海水や火山ガスに由来し、海岸や火山の近くに湧く温泉に多く、火山近くにある温泉では火山ガスが溶け込んだ酸性の塩化物泉が見られます。また、内陸に化石海水型温泉と言われる1,500万年以上前の海水が温泉となって湧出しているものもあります。
飲用設備の整った温泉での飲用は萎縮性胃炎、便秘の療法が期待されています。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○末梢循環障害、○冷え性、○うつ状態、○きりきず、○皮膚乾燥症
□自律神経不安定症、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□耐糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
○萎縮性胃炎、○便秘

宅配用の温泉は飲用には使用しないでください。


炭酸水素塩泉

溶存物質が1kg中1g以上で、炭酸水素イオンを主成分とする温泉。皮膚の浄化作用で、角質などを剥がし皮膚を滑らかにするため「美人の湯」と称され、女性に人気があり湯上がり後は清涼感があると言われています。
代表的な泉質は「ナトリウム-炭酸水素塩泉」。炭化水素塩泉で遊離二酸化炭素を多く含んでいるものは、「含二酸化炭素-ナトリウム-炭酸水素塩泉」と呼ばれ、遊離二酸化炭素の効果でより血行が促進されます。肌が弱い人は入浴後に水で洗い流すとよいでしょう。塩化物泉と同じく保温性が高いです。
飲用設備の整った温泉での飲用は胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、尿酸血症(痛風)の療法が期待されています。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○末梢循環障害、○冷え性、○きりきず、○皮膚乾燥症
□うつ状態、□自律神経不安定症、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□耐久糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
○胃十二指腸潰瘍、○逆流性食道炎、○糖能異常(糖尿病)、○高尿酸血症(痛風)

宅配用の温泉は飲用には使用しないでください。


硫酸塩泉

溶存物質が1kg中1g以上で、硫酸イオンを主成分とする温泉。無色透明なので単純泉に似ているが味は苦い。保温効果や降圧効果が高いとされ、古来より「傷の湯」「中風の湯」と称されることが多いです。酸素を血液に多く送る作用が有り、動脈硬化予防にも効果があると言われています。
陽イオンの中でナトリウムイオンを多く含んでいると「ナトリウム-硫酸塩泉」。
カルシウムイオンを多く含んでいると「カルシウム-硫酸塩泉」となります。硫酸 塩泉の中で酸性を示す温泉は「酸性-○○-硫酸塩泉」と表示されます。効果を高めるためには、入浴後は温泉を洗い流さず、乾いたタオルなどで水分を拭き取り、服を着るのが良いでしょう。肌が弱い人は入浴後に水で洗い流すと良いでしょう。
飲用設備の整った温泉では飲用による胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘の療法が期待されています。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○末梢循環障害、○冷え性、○きりきず、○皮膚乾燥症、○うつ状態
□自律神経不安定症、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□耐糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
○胆道系機能障害、○高コレステロール血症、○便秘

宅配用の温泉は飲用には使用しないでください。


二酸化炭素泉

遊離二酸化炭素を1kg中1g以上含み、肌につく気泡が印象的な温泉。遊離二酸化炭素とは、かつて炭酸ガスと言われ、皮膚から体内に入り、毛細血管を拡張し、血流を促進させます。低温だが保温性が高く、入浴することで皮膚や筋肉の酸素が増加し新陳代謝を亢進させ、老廃物の痛み物質の排泄を促します。
溶存物質が1kg中1g以上の場合、塩化物泉では「含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉」。炭酸水素塩泉では「含二酸化炭素-ナトリウム-炭酸水素塩泉」。硫酸塩泉では「含二酸化炭素-ナトリウム-硫酸塩泉」と表示されます。遊離二酸化炭素以外の溶存物質が1kg中1g未満の泉質は「単純二酸化炭素泉」と表示されます。
二酸化炭素のこのような効果を期待した入浴剤も見受けられます。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○末梢循環障害、○冷え性、○きりきず、○自律神経不安定症
□うつ状態、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□対糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
なし


含よう素泉

2014(平成26)年に療養泉の定義が改訂され、新たに追加採れた泉質。泉質に追加されてまだ日が浅く、過去に行われた温泉分析では「よう化物イオン」の分析があまりなされていないこともあり、全国的に含よう素泉の分布は十分明らかになっていません。
「ナトリウム-塩化物強塩泉」に、よう化物イオンが1Kg中10mg以上含まれることが期待されている温泉は「含よう素-ナトリウム-塩化物強温泉」というように表示されます。
よう化物イオン1Kg中10mg以上含み、溶存物質が1Kg中1g未満の泉質は「単純よう素泉」と表示されます。飲用設備の整った温泉での飲用による高コレステロール血症の療法が期待されています。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
□末梢循環障害、□冷え性、□自律神経不安定症、□うつ状態、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□対糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
○高コレステロール血症

宅配用の温泉は飲用には使用しないでください。


含鉄泉

鉄イオンを1kg中20mg以上含む濁り湯の代表的な泉質の温泉。湧出直後は無色透明だが、温泉水が空気に触れると酸化し、鉄による茶褐色の濁りや沈殿物を生じるために「黄金の湯」と言われています。
溶存物質が1kg中1g以上の場合、塩化物泉では「含鉄-ナトリウム-塩化物泉」。
炭酸水素塩泉では「含鉄-ナトリウム-炭酸水素塩泉」。硫酸塩泉では「含鉄-ナトリウム-硫酸塩泉」と表示されます。溶存物質が1kg中1g未満の泉質は「単純鉄泉」と表示されます。
飲用設備の整った温泉での飲用による鉄欠乏症貧血の療法が期待されています。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
□末梢循環障害、□冷え性、□自律神経不安定症、□うつ状態、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□対糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
○鉄欠乏性貧血

宅配用の温泉は飲用には使用しないでください。


酸性泉

水素イオンを1kg中1mg以上含み、pH3未満の温泉。入浴によって身体全体の調子を変えて、病気を治す力を高めてゆく変調効果が強く認められています。酸性が強く殺菌効果が高いため水虫に有効といわれております。また、末梢血管拡張や肌を滑らかにしてくれます。
活動している火山の近傍に有り、塩化水素ガスや亜硫酸ガス、硫化水素ガスなどの火山ガスの噴出における高温の蒸気活動が見られる場所に多く「酸性-塩化物泉」あるいは「酸性-硫酸塩泉」のどちらかです。「アルミニウム-硫酸塩泉」であれば「酸性-アルミニウム-硫酸塩泉」と表示されます。
溶存物質が1Kg中1g未満の泉質は「単純酸性泉」と表示されます。
皮膚への殺菌効果が高く、硫黄泉と同様、肌の弱い場合は入浴後に洗い流す方がよいでしょう。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○アトピー性皮膚炎、○皮膚化膿症、○尋常性乾癖
□末梢循環障害、□冷え性、□自律神経不安定症、□うつ状態、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□対糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
なし


硫黄泉

総硫黄を1kg中2mg以上含む温泉。硫黄の独特のにおいが有り、湯の花と言われる硫黄を析出するため、太陽光線の当たり具合によって乳濁色や白黄色、黄緑色、緑色、淡青色など、微妙に浴槽の色が変化することでも知られています。
総硫黄の主成分が硫化水素であれば、「含硫黄-○○-硫酸塩泉(硫酸水素型)」というように泉質名の末尾に(硫化水素型)と付記されます。溶存物質が1Kg中1g未満の泉質は「単純硫黄泉」と表示されます。
酸性泉と同様、皮膚に対する刺激が強いので、肌の弱い場合は入浴後に洗い流す方がよいでしょう。
また、金属をつけると腐食し黒くなるのでアクセサリーなどは要注意です。
飲用設備の整った温泉での飲用による耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症の療法が期待されています。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○アトピー性皮膚炎、○皮膚化膿症、○尋常性乾癖、○慢性湿疹
□末梢循環障害、□冷え性、□自律神経不安定症、□うつ状態、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□対糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□関節リュウマチ、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
○耐糖能異常(糖尿病)、○高コレステロール血症

宅配用の温泉は飲用には使用しないでください。


放射能泉

ラドンが含まれている温泉を総称したもので、入浴により高尿酸血症(痛風)、間接リウマチ、強直性脊椎炎などに効果が期待されています。
ラドンは気体のため、皮膚からだけでなく呼吸器からも吸入することができます。
ラドンの含有量により弱放射能泉(ラドン含有量8.25マッヘ単位以上50マッヘ単位未満)、放射能泉(ラドン含有量50マッヘ単位以上)の2種類に分類されます。
ラドン含有量50マッヘ単位以上で「ナトリウム-塩化物泉」であれば「含放射能-ナドリウム-塩化物泉」という表示になり、弱放射能泉で溶存物質が1Kg中1g未満の場合は「単純弱放射能泉」と表示されます。ラドン泉、ラジウム泉とも呼ばれています。
花崗岩地帯に広く分付しており、特に西日本で多く湧出しております。

効能(適応症):○泉質別適応症、□一般的適応症

<浴用>
○強直性脊椎炎、○関節リュウマチ、○高尿酸血症(痛風)
□末梢循環障害、□冷え性、□自律神経不安定症、□うつ状態、□不眠症、□高血圧(軽症)、□喘息・肺気腫(軽症) 、□対糖能異常(糖尿病)、□痔の痛み、□病後回復期、□胃腸機能低下、□疲労回復・健康増進、□高コレステロール血症、□筋肉や関節の慢性的なこわばり、□運動麻痺による筋肉のこわばり
<飲用>
なし

入浴前に要チェック! 温泉の禁忌症(きんきしょう)

※出典:環境省自然環境局「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」 禁忌症とは1回の温泉入浴または飲用でも身体に悪い影響をおよぼす可能性がある病気・病態のことを言います。 すべての温泉に共通するものから、特定の泉質で注意しなければならないものまで、環境省が注意を促していますので、温泉水のご利用時にご注意ください。

入浴時の禁忌症・注意事項

■すべての温泉に共通する禁忌症
◎病気の活動期(特に熱のあるとき) 病気などで体力が消耗している際の入浴は体に大きな負担をかけるだけでなく、症状が悪化することがあるので避けましょう。 ◎身体の衰弱時 活動性の結核や進行した悪性腫瘍または高度の貧血など身体の衰弱が著しい場合は脱水や血栓症などを起こす可能性があります。悪性腫瘍でも全身の状態が良好な場合ならば禁忌ではありません。 ◎心臓・肺・肝臓の重い病気 水圧によって心臓や肺、肝臓への負担が大きくなるため、重度な状態の病気の場合は入浴を控えた方が良いでしょう。入浴する場合は、医師の厳格な指導に従ってください。 ◎出血がある場合 胃腸などの消化器官からの出血や怪我など目で見える出血がある時は血液を介した感染症があるので、先ずは治療を優先してください。止血が確認できまで入浴は控える方がよいでしょう。 ◎慢性気管支炎・狭心症 慢性気管支炎で発熱や呼吸が苦しい場合や、狭心症で胸痛頻度が増えている場合は症状を悪化させる可能性があるので入浴は控える方がよいでしょう。
■酸性泉・硫黄泉に共通する禁忌症
◎皮膚や粘膜が敏感な人 皮膚や粘膜が弱いと入浴することで「湯ただれ(皮膚炎)」を起こすことがあります。 酸性が強い温泉や硫黄成分が高濃度の場合は、入浴後すぐに水道水などで洗い流すようにしてください。 ◎皮膚乾燥症の高齢者 泉質によって皮脂などの油分が抜け乾燥するため症状を悪化させる場合があります。 入浴を控えた方がよいでしょう。
●注意すべきこと
◇食事の直前・直後、飲酒後の入浴は控えましょう ◇高齢者・小児・身体の不自由な方の一人きりでの入浴は避けましょう ◇過度の疲労時、運動後30分以内の入浴は控えましょう ◇入浴前後は水分の補給を忘れずに ◇入浴前は手足から全身へのかけ湯と身体を洗いましょう ◇高血圧、心臓病、脳卒中にかかった方や高齢者の42℃以上の高温浴は避けてください ◇心肺機能が弱っている場合は半身浴や部分浴が望ましいです ◇温泉成分を残すために入浴後は洗い流さずタオルで拭き取ってください ◇お湯を清潔に保つために浴槽にタオルを入れるのは避けましょう ◇湯あたりした場合は、入浴を中止するか回数を減らして回復を待ちましょう